普段投資やお金のことを中心に発信していますが、本業は特別養護老人ホームで介護福祉士として働いています。今回は認知症について、私が思っていることをまとめていきます
- 認知症高齢者は困った人か、老害か
- 生きる価値があるかどうかはケアする人によって決まる
- 認知症も人間だということ
- 認知症の方が求めてるニーズ
- 認知症の方が社会的存在としてあり続ける事
- 最後に、介護士としての私の考え
認知症高齢者は困った人か、老害か
食べ物ではないものを口に入れる。人の家に侵入する。人のものを盗む。同じことを何度も繰り返し訴える。ゴミ箱に排泄をするなどなど
度々認知症子高齢者が問題として取り上げられるニュースで流れます。踏切に入ってしまって電車を止めたなんてのもよく聞きますね。ネット上では「老害」なんて言葉を見たこともあります。私の一番嫌いな言葉です
普段から認知症の方と関わっていない、介護経験のない方からすると認知症は“困った人”という認識なのかもしれません
ですが、本当に困っている人は誰でしょうか
危険なものを認識できず口に入れてしまう。自分の家が分からなくなって人の家に入ってしまう。自分のものか判断が出来ず持ち帰ってしまう。記憶が障害され聞いても覚えられず不安になる。トイレの場所が分からなくなり、困ってゴミ箱に排泄してしまう
認知症の方は誰よりも困ってる人じゃないでしょうか
認知症は“困った人”ではありません。“困っている人”です。老害でもなんでもありません。
生きる価値があるかどうかはケアする人によって決まる
重度の認知症になった方、重度のねたきりの方、老いて亡くなる方
この人たちに生きる価値はあるのでしょうか
私の答えはこうです。生きる価値があるかないか、それは出会った人、ケアする人に寄って決まります
重度の認知症であっても、周囲のサポートがあってその人らしく生きられるか、危ないからと拘束されてしまうのか、「何もできないでしょ」と決めつけてほっとかれるのか
人生は関わった人間、入所した福祉施設、周囲の介護職員によって決まるということです
私が仕事をするときに考える事、目の前の入居者様と出会えたのなら、その方の人生を良くしたい。より良い最期を迎えてもらいたい
認知症も人間だということ
認知症の人に対し、「この人は認知症だから」と扱いを蔑ろにしていないか、人間としての扱いをしているか
“そんなの当たり前、してるわけない”と思うかもしれません。でも、介護士であっても、時に人として扱っていないことがあるのかもしれないです。例えば
・何も言わず食事を口に入れる
・タメ語を使う→先輩職員には敬語なのに
・ノックをせずお部屋に入る
・高圧的な態度をとる
・大きな声で排泄の話をする
・突然車椅子を動かす
・立ち上がると「座ってて」と言う→トイレに行きたいだけなのに
これが人にする扱いなのか。認知症だからとついついしてはいないか。私も注意しなければならないと思います
認知症の方が求めてるニーズ
パーソンセンタードケアという考え方があります
“認知症のある人”ではなく、“認知症のある人”と捉え、認知症の症状を見るのではなく、その人が望むこと、想い、その人らしさにフォーカスをあててケアをすること
また、日々の業務中心のケアではなく、その人を中心としたケアを行うことを目指した考え方がパーソンセンタードケアです
認知症を持つ人の心理的ニーズとして特に重要とされるのが、1人の人として無条件に尊重されることを中心として、“共にあること”、“くつろぎ”、“自分らしさ”、“結びつき”、“たずさわり”です
下の図はパーソンセンタードケアを提唱したイギリスのトム・キッドウッドが中心に全要素に根差した“愛”を据え、5枚の花びらで表した絵です
認知症を持つ人にとって、これらのニーズを自ら満たすことは難しくなります。周囲が積極的に働きかける必要があります。周囲とは家族であったり私のような介護士です
認知症の方が社会的存在としてあり続ける事
認知症が発症し、記憶障害により、自分自身が何者なのかが分からなくなっても、「周囲の人がその人の持つ、その人らしさを尊重し、尊敬の念を持って関わること」により、認知症の人のアイデンティティは維持されます
認知症の進行と共に、記憶障害や認知機能の低下が進んでも、ますます「周囲の人がその人の持つ、その人らしさを尊重し、尊敬の念を持って関わること」によって、最期まで認知症の人が社会的存在としてあり続けられます
こんな話を聞いたことがあります。ある国の教会のシスターが90歳で亡くなった後、脳の解剖で後期のアルツハイマー型認知症だったことが発覚。ですが、周囲の誰もそれに気づかなかったそうです
シスターができなかったことを周囲の人たちが受入れ、支えて生活を送った結果、最後までその人らしく生きれたんだろうなと思います。もちろんシスターも穏やかな方だったんだろうなとは思いますが
最後に、介護士としての私の考え
施設には生活相談員やケアマネージャー、機能訓練士に看護師や栄養士といった専門職がいます。1人の高齢者様に対し、多職種が密接に連携してケアを行います
その中で介護士は、誰よりも身近に高齢者様と関わる重要な専門職です。
入居者様のニーズや思いを汲み取り、それを多職種に繋げ、その人らしい生活を送ることを目指す素晴らしい仕事だと認識しています
介護士はまだまだ社会的な地位が低く不人気な職種です。しかし、これからの超高齢化社会を支えていくのは間違いなく最前線に立つ私たち介護士です
最後にマザーテレサの名言を載せます
【人生のたとえ99%が不幸でも、最後の1%が幸せならば、その人の人生は素晴らしいものになる】
最後の1%に関わる仕事に誇りをもち、これからも頑張っていこうと思います
今後も不定期でブログ更新していきます
Twitterもよろしくお願いします
【昔の書いた記事ですが良ければどうぞ】